上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

先日、山田風太郎の『魔群の通過』を読んだ。
扱っているのは、"水戸天狗党"というもの。

この天狗党、読むまでフィクションなのだと思い込んでいた。
そう、これを読むまで天狗党というものを今まで一切知らなかったのだ。これだけ大きな歴史の出来事をまったく知らなかった。茨城水戸の人、福井敦賀の人は知っているのかもしれないけど、一般の人はあまり知らないのかも。歴史の教科書にも何故だか出てこないからね(いやでも、やっぱり知っている人は結構いるのかも。結構色んなところに天狗党に関わった人たちの史跡が残されてるから)。

事の起こりやその経過は、そこまで大きな出来事ではなかったが(いや、かなり過酷な上洛の行軍ではあったのだが)、衝撃だったのは、そう天狗党の顛末である。あまりにも凄惨すぎる処罰というか。いや、でも、これが本当の『日本の歴史』なんだよな、とか。

事の発端は、水戸藩内で起こった内紛だった。水戸藩主の水戸斉昭の病死後、藩では尊王攘夷派(『天狗党』)と諸生派の対立が激しくなっていった。天狗党を挙兵した藤田小四郎(首領は武田耕雲斎)。これに対し諸生党の市川三左衛門といった形で争いが続いていく。
けれど、天狗党は幕府によって弾圧。追い詰められながらも、尊皇攘夷の志を朝廷に伝えようと、一橋慶喜を頼るため上洛を決意。京都を目標に行軍を開始。その数は、1000人近い数。途中で更に数が3000まで増えたり、また1000前後に減ったり。
11月1日に大子を出発し、12月17日に福井の敦賀で投降する。
投降のきっかけは、天狗党が頼りにしていた一橋慶喜が幕府軍を率いて討伐に向かってきたため。

それで終わったのなら、他の小説と比べてそんなに衝撃的ではないのだが、その後、田沼意尊の手に渡ってからの彼らの処遇である。
狭い「にしん肥料蔵」の中に大人数を押し込めて監禁。衣服もほとんどつけられない裸同然の状態で、暗闇・悪臭・雪国の寒気の中、病死者20名以上。
そして352名が斬首刑。これは近世未曾有の惨劇だそう。更に酷いのが、市川三左衛門の諸生党が水戸で天狗党の家族らをことごとく処刑・投獄。女・子供(三歳の幼児まで)も容赦なく。
重罪を犯すと家族にも刑が及ぶというのは当時あったけれどね(児童文学の『ベロ出しちょんま』などでも描かれている)。その規模がこれはちょっと大きい。。。 悪環境で長期間の投獄に、生きて出られても重い障害を負ってしまったり。

処罰が酷過ぎるというのもあるけど、更にその先では、今度立場が逆転し、天狗党の残党側が諸生党に報復。市川三左衛門は逆さ磔の刑。そして、諸生党のその家族もことごとく処刑していったという。そういうのが藩内で続いていったそうだ。
『藩内抗争により人材をことごとく失ったため、藩出身者が創立当初の新政府で重要な地位を占めることは無かった』とのこと。

なんというか、人材がいなくなるほどの報復合戦って……。
水戸周辺には処刑場もかなりあったそうで。
水戸というと納豆や黄門様というイメージがあったけれど、一気に『天狗党』というイメージになった。また敦賀もイコール天狗党の処刑地に。
敦賀では、刑場になった来迎寺がちゃんとあったり、拘禁に使用された『にしん肥料蔵』が松原神社にあったり、墓標が立てられていたり、銅像が建てられていたり。史跡がちゃんと残されています。→こちら(敦賀の歴史『水戸天狗党』の紹介)

でも、こういう史跡はやはり大切にするべきだと思う。凄惨過ぎるから目を背けるのではなく(歴史上あまり公にしないのではなく)、それだけ大人数の犠牲を払ってきて、死者に冥福を祈るのは当然のことではないかと(尊皇攘夷派とかそんなの関係なくね)。

ちなみに、この天狗党には、渋沢栄一が少し関わっていたり、新撰組が生まれるきっかけにもなったと言われてたり(新撰組初代筆頭局長:芹沢鴨が新撰組を作る前、天狗党に一時参加していたらしい)、坂本竜馬が天狗党の残党を怖れてたとか、樋口一葉の師匠・中島歌子が天狗党の乱で投獄されていたり、歴史の変動に大きく関わってるんですよね。
なのに、何故大きく取り上げられないんだろう(島崎藤村の『夜明け前』には天狗党が出てくるそうだ)。師走の特番ドラマでやってもいいほど。

まあ、この出来事を知ってから津山事件がまだましなものに思えてきてしまった(あれも十分恐ろしい事件ですが)。
長崎奉行・竹中重義の切支丹弾圧などの拷問の歴史といい、この352名斬首の歴史といい、日本の歴史は知れば知るほど恐ろしいもの。あの藤沢周平も織田信長を詳しく調べていってその残虐性・残酷な仕打ちを知って、信長についての小説を書くのをやめたほど。

いつか水戸・敦賀、両方に供養しに行きたいものです。
スポンサーサイト

コメント
管理者にだけ表示を許可する
 
プロフィール

純章(すみゆき)

Author:純章(すみゆき)
命中率ほぼ0%な射手座の人。
小説家を目指すもなかなか結果出ず。

時代小説好き。

最新記事
最新コメント
カテゴリ
訪問者数
twitter
月別アーカイブ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。